Isaac SimでG1を歩かせたところ、前には進むものの、脚が細かくカタカタしていました。速度指令を滑らかにし、追従カメラも調整しましたが、歩き方への違和感は残りました。
そこで関節の動きを記録し、4つの構成を比較しました。最終的にUnitreeの対応するロボットモデルと歩行ポリシーへ切り替え、脚関節の高周波変動は旧構成比で45.6%低減しました。まず動画をご覧ください。
速度指令を滑らかにするだけでは足りなかった
進行方向や速度の指令が急に変われば、ロボットの動きも急になります。ただ、今回の問題は一定速度を指示している間にも残っていました。カメラの揺れと、関節そのものの細かな運動を分けて調べる必要がありました。
まず実行設定を読み直すと、旧デモは学習用の環境で動いており、ポリシーに渡す観測へ人工ノイズが入っていました。評価用のPLAY環境に切り替えると改善はありましたが、それだけでは十分ではありませんでした。
一方、旧モデルの関節設定や制御周期は、保存された学習設定と一致していました。「周期が合っていなかったから」とは説明できません。学習反復数にも違いはありましたが、今回は反復数だけを変える実験をしていないため、原因とは断定していません。
4構成を、同じ速度指令で比較する
各試験は12秒。最初の2秒は静止し、1秒かけて前進指令を0.5 m/sへ上げ、その後は一定にしました。物理計算は200 Hz、ポリシーの更新は50 Hzです。始動の影響を避け、4〜11秒の股・膝・足首に相当する12関節を評価しました。
| 構成 | 関節加速度RMS(rad/s²) | 6 Hz超の関節角変動RMS(rad) | 実前進速度(m/s) |
|---|---|---|---|
| 旧モデル・学習環境 | 86.25 | 0.01973 | 0.351 |
| 旧モデル・PLAY環境 | 71.75 | 0.01799 | 0.297 |
| Isaac Lab配布用キャッシュ・PLAY環境 | 78.47 | 0.02154 | 0.392 |
| Unitreeの対応モデル+ポリシー | 47.92 | 0.01074 | 0.568 |
新構成では、旧モデル・学習環境に比べて関節加速度RMSが44.4%、6 Hz超の関節角変動RMSが45.6%低くなりました。後者は関節角へ4次のButterworthハイパスフィルターを往復適用し、時間と関節をまとめてRMSを計算しています。
ただし、同じなのは速度の指令値です。実際の前進速度は構成ごとに異なります。さらにロボットモデルとポリシーを一緒に変えているので、片方だけの効果を証明する比較ではありません。この数値も歩容の自然さ全体を採点するものではなく、細かな振動を確認するための指標です。
モデルとポリシーを、対応する組み合わせで動かす
採用したのは、Unitree公開リポジトリのG129_CFG_WITH_DEX3_WHOLEBODYと、対応するpolicy.onnxです。メーカー実装の観測履歴、関節順序、推論、関節目標への変換を再利用しました。通信部分をローカルの速度指令へ置き換え、シミュレータ内で評価しています。
新しく歩行ポリシーを学習した結果ではありません。公開済みのモデルとポリシーを組み込み、既存構成と比較した結果です。使用したUnitreeの版は e30c25b1dffdf92ada1d6c8c1fe9a47bdde0fecc、実行環境はIsaac Sim 5.1、ONNX Runtime 1.22.1です。
倉庫シーンでも15秒間歩行を確認
倉庫シーンでも転倒せず15秒間歩き、6 Hz超の関節角変動RMSは0.01067 radでした。ただ、横方向へのドリフトは残っています。一定指令で歩けることと、狙った場所まで到達できることは別に検証する必要があります。
今回できたことと、次に確かめること
続編:この歩行構成にVisual SLAMを接続し、地図生成と別走行での再定位を検証しました。以下は歩行改善時点の記録です。
今回確認できたのは、シミュレーション上での歩行改善です。実機での再現は未検証で、新しい歩行構成へのVisual SLAM接続、地図構築・再局在化も未完了です。Unitreeの公開資料でも、同梱の重みはシミュレーション試験用とされています。
次はこの歩行構成にカメラとIMUの記録を接続し、自己位置推定の精度と経路追従を評価します。歩行の見た目、関節の振動、自己位置推定、目的地への到達をそれぞれ記録していきます。
今回の切り分けで役立ったのは、指令を調整し続ける前に、評価環境と生の関節運動を確認したことでした。動いた動画に加えて、何を変え、何が改善し、何が残ったかを記録しておくと、次の検証を進めやすくなります。
使用した公開資料
Unitree公式:unitree_sim_isaaclab(使用コミット)。本記事の数値と動画はチームゼットによる2026年9月6日の試験結果です。